2010年1月 7日

キリクと魔女


学生たちと「キリクと魔女」を見た。

ギニア在住経験のあるアフリカ系フランス人によるこのアニメ映画は、アフリカをモチーフにした優れたアニメだ。知ってる人は知ってると思うが、このアニメ、衝撃の結末なのだ。「衝撃の結末」とはこういうことを言うのだと思う。誰も予想できない。

見終った学生たちの感想も、ひとしきりそれでもちきりだった。途中で寝てしまった学生は、最後まで見た学生とまったく話があわない。

そのほか、色彩や音楽が今まで見たことがあるアニメと全然ちがうという感想が多かった。たしかに。

この映画の魅力は、小道具だ。村の家や家財道具、服装や村の暮しぶりなど、もうほんとうのアフリカの村にそっくり。また、動植物もとてもリアル。いくつかの動植物は、種名までちゃんとわかるほど。

村人の身振りやしぐさもすごい。大きく腕をふって演説するおばさんとか、川であそぶ子どもたちの動きとか。そして音楽。現代的アレンジはしているけど、アフリカ音楽のエッセンスはしっかり凝縮されてる。そして村人は何かあるとすぐ歌い、踊る。そこもアフリカっぽい。

ひとり、「歌ったり踊ったり、ディズニーっぽかった」という感想を述べた学生がいた。それは、指摘されるまでまったく思いつかなかった。たしかにディズニー映画も歌って踊る。

だが、なんというんだろう。ディズニーのアニメは、何をモチーフにしようと、そのすべてが「ディズニー化」されているように思える。「アラジン」はちっともアラブっぽくないし、「ポカホンタス」は見てないけど、現実のネイティブ・アメリカン的要素はすっかり消されていたどころか、ひどい歪曲がされていたと聞く。白雪姫だってそうだ。グリム童話だってことを忘れそうになる。というか、白雪姫といえばディズニー、みたいになっている。

結局、ディズニーアニメの「舞台」は、ディズニーランドなのだ。作中人物が歌い、踊るのは、観客にむけたショーである。でも、「キリク」の中でみんなが歌い、踊るのは、ある意味"ほんとうに"歌って踊りたくなって、それで歌って踊っているのだ。

ということが、伝えられたらよかったな。

あと、余談だが、フランス語がみじかく完結で、耳で聞いてぜんぶわかった。子どもむけ映画は、耳を鍛えるのにいいかも。


2010年1月 6日

2010年の目標

あけましておめでとうございます。

  • 人類学をやる
  • 論文を2本以上書く

だった。人類学については、一応人類学分野の本(共編)を出したので、よしとしよう。論文は、本の一章を書いたのを入れても、目標を達成できなかった。霊長類学会の運営が、思ったよりもずっと大変だったとか、JICAのプロジェクトがいよいよはじまったとか言い訳はあるが、言い訳をしたらきりがない。

4月に年度がかわってから、大学の講義と雑務のスクランブルにペースを乱し、そのままいまひとつ乗れない一年だった。今年は、同じ轍を踏まないよう、まずは年間コンスタントに働くという意識を強くもとうと思う。

よかった点は、人類学、人類学、と事あるごとに言ってきたので、自分の意識がだいぶかわったというところか。生物学でゆくのか、人類学でゆくのか。後者のほうが自分にとってはぜったい面白い。

で、今年の目標。宿題や目先の仕事はたくさんあるので、それはそれとして、今年も人類学路線でゆこう。今年は

  • 「家族論」をやる。
  • チンパンジーとゴリラの種間関係の研究の人類学的意義について再考する。
のふたつを目標にしたい。僕は、「類人猿の生態研究を通じて人類の社会進化を考える」ということをしたいのだが、家族論は解明すべき人類社会の姿を明確にするため、種間関係研究の意義の再考は、類人猿と人類をつなげるためだ。両方がつながると、自分の人類学ができると思う。

公表するレベルに達するかはともかく、このふたつは今年のうちに書いたものを作りたい。

あと、具体的なことでいえば、
  • 積年の宿題をすべて終わらせる
  • ニホンザルの本の企画を脱稿する
  • ムカラバの総合調査を成功させる
  • GISシステムを完全構築する
  • IPSのシンポを成功させる
  • 授業でとりくんできた「環境と人間」の内容をかため、テキスト化する
  • 落語のネタを二つふやす
といったところ。人目に触れるところに書いちゃった。がんばろう。