2008年7月29日

太陽光発電システムの試験

石油価格の高騰は調査費にも影響する。ガボンでもガソリンや軽油の値段があがっているようだ。

何とかしたいと思い、今年は人力発電にとりくもうと思っていた。去年は、手回し充電器「パワーレスキュー人力くん」をフィールドにもっていった。携帯電話と、単三型の充電池を手回しで充電できる。しかし、これは緊急用という側面が強く、実際にはあまり使えなかった。

「人力くん」について、検討している人のためにもう少し情報を書いておこう。完全に放電したエネループを2本装着し、15分手回ししたところ、Garmin GPS Map60CXを15分使用できた。つまり、回した時間だけGPSが使えた。要所要所でGPSを起動し、必要なポイントの測位をするというのが目的なら、一日の実駆動時間はそう長くないので、エネループ4本と人力くんでGPSを使用可能だ。しかし手間である。さらに回すときジージーうるさい。起動した状態で持ちあるいてトラックログをとろうとする場合には、全然充電がおいつかない。製品の名誉のために書いておくが、これは緊急用に充電するものだから、それで必要な電力をまかなおうというのはそもそも間違いである。

さて、それで、自転車か何かを利用して、人力でもう少し効率的に、たくさん発電できないかと考えた。だが、人力で発電するというのは、なかなか大変だということが調べてわかった。自転車発電自体は結構おもしろそうなんだけど、フィールドで試行錯誤しながら自作する時間はないし、そして今度は「誰がこぐんだ?」という問題がある。というわけで人力は今回あきらめた。

それで、太陽光発電である。フィールドワークにおける太陽光発電の利用については、京大アフリカセンター木村さん論文を書いている。それも含め、僕が読んだ本には、太陽電池パネルとバッテリーをつなぐコントローラを自作(または特注)するものが多く、それがネックだと思っていた。また、太陽光パネルのメーカー(昭和シェル、サンヨー、京セラなど)のウェブサイトは、住宅用システムに重点がおかれていて、携帯用というか、小規模システムの設計方法がなかなかみつからなかった。

そしたら、日本イーテックの「太陽光発電のすすめ」というページを見つけた。基礎知識からシステムの設計手順まで丁寧に説明してくれている。そしてそのまますぐ通販で買える。さらに、充放電コントローラも今はいろんな安い市販品があるとわかった。

というわけで、太陽電池パネルはケー・アイ・エス製のGT234S(スーツケースにぴったり収まるサイズ!)、充放電コントローラはMORNINGSTAR製のSHS-6という組み合わせで購入。充放電コントローラは、今後パネルの増設を想定して選択した。

車パーツ屋さんで、バッテリーとDC-ACコンバータや、こまごましたケーブルを購入し、まずは実験。基本的には、ホームページの説明にあるように配線するだけで、見事に動いた。めでたしめでたし。

しかし、フィールドでは何がおきるかわからない。導入している他のフィールドの人に聞くと、バッテリーが予想以上に早くへたったり、充放電コントローラが故障したりといったトラブルがおきるという話を聞いた。今回の渡航で、うまく設置できることを祈るばかりだ。うまくいったら(いかなくても)帰国後にまたこのブログで報告しようと思う。

サル学者のフィールドワーク

前期の授業がおわり、レポートの採点などをしつつ、来週からのガボン現地調査の準備をしている。

僕のゼミの卒業研究の課題は、どんなテーマでもいいから、自分でフィールドワークをして何かを発見するというものだ。子どもや福祉を学ぶ学生にサルの研究をさせてもしょうがないので、卒業後の彼らに役にたつことで、自分が教えられることは何だろうと考えたときに、浮かんだのが「フィールドワーク」だった。

といって、僕がやってきたのはサル調査のフィールドワークだ。人や社会の調査のフィールドワークの手法やノウハウはわからない。そこで、学生に読ませることも考えて、フィールドワークに関する本を探してみると、最近かなりたくさん「フィールドワーク本」が出版されていることに気付いた。

何冊か読んでみて思うことはふたつ。やっぱりフィールドワークはいいなぁ、ということと、フィールドワークって、フィールドワーカーの数だけあるのだな、ということだ。業種と人によって、まったく違う世界が広がっている。

だが、そのフィールドワークの多様性のせいで、それぞれのフィールドワーク本に、いまひとつ満足できない点を感じた。多くの本は共著の形で、何人かの執筆者がそれぞれ自分のフィールドワーク体験をもとにそれぞれのフィールドワーク論を展開している。それらひとつひとつはおもしろいのだけれど、全体として「フィールドワークに通底する何か」のようなものが見えてこないのだ。

個人的なあこがれや、大学の卒論、修士の研究などで、これからフィールドワークをしようという人は、こういう「フィールドワーク本」から何を得られるかと考えると、僭越ながら、僕が最近まとめ読みした数冊の中には学生に勧めたいと思う本は多くない。

もし、一冊オススメをあげるなら「フィールドワークは楽しい」(岩波ジュニア新書)だ。他のフィールドワーク本は、一体誰のために書いているのかがはっきりしないものが多いが、これは、ジュニア新書ということで、中高生、つまり、フィールドワーカーではない若い世代を対象にしているため、表現もかみくだいてあるし、専門性を強調せず、フィールドで自分がどういう苦労をし、どういう喜びを得たか、ということが伝わりやすくなっている。

さて、あまりオススメはないと言いつつ、実のところ、僕はとても楽しくこれらの本を読んだ。フィールドワーカーは、調査結果だけではなく、自分のフィールドワークそのものを語りたいのだな。そして、かれらが語りたいことというのは、「実感」なのだな。残念ながらいくつかの本や章では、その実感はうまく伝わっていないけれど、そこに「実感があった」ということは、やはりフィールドワークをなりわいとしている僕には伝わってきた。そして、僕も自分がフィールドで感じている実感を人に伝えたくなった。

考えてみると、サル研究者によるフィールドワークの本は、昔は多かったが、今は少ない。でも、サル屋のフィールドワークは、ヒト屋のフィールドワークとはずいぶん違う。その一方、対象種や調査地の地域に違いはあれど、サル屋のフィールドワークに共通の特長や魅力があるように思える。また、昔のサル屋のフィールドワークと、今の、僕と同世代のサル屋のフィールドワークも、ずいぶん違うのではないか。そう考えると、仲間をあつめてフィールドワークの研究会でもやってみたくなる。

2008年7月 8日

霊長類学会

先週末は霊長類学会で東京に行ってきた。
2週連続の研究会ということで、結構しんどかった。準備不足がたたって、自分の発表は我ながらちょっと情けなかった。ムカラバのチンパンジーのおおざっぱなまとめ。もっとしっかり準備期間をとっておけば、もうちょっと明快に言えるところもあったと思うが、部分部分でお茶をにごしてしまったのは反省。

しかし、日々「雑用」に追われていると(大学教員の「エフォート」の大部分は雑用である!)、多少しんどくても、学会や研究会に出ることは刺激になる。焦りも感じるが、それよりも前向きに、もっと勉強しようという気になる。はっきりと「研究する暇があったら雑用をしろ」という大学もあるという話だから、そんななかでがんばっている人のことを考えると、まだまだ頑張れるはずだと思うことしきりだった。

ま、とにかく疲れたけど。