2008年10月19日

二極化する環境問題

授業に関連することもあって、地球温暖化問題やバイオ燃料の問題について、今年から少しまじめに勉強している。といっても、自分の専門にしようというつもりではないので、原著論文をあたることより、資料や日本語の本を読んで考えを深めてゆこうというわけだ。

地球温暖化は時代のトレンドだ。ほんっとにたくさんの本がでている。が、同じ人が似たようなテーマで量産していたり、専門家でもなんでもない人が、そうした人たちの本を読んで勉強したことに基いて自分の意見を述べているだけ、というものもある。たとえば山本弘「環境問題のウソのウソ」とか。

地球温暖化に関する本を今年になってから20冊以上読んだが、気づいたことがいくつかある。

  • 旗幟鮮明な本が多い。ゴアの「不都合な真実」に代表される現在のCO2削減一点張りの論調に対して賛成か反対かが明確なものが多い。
  • 未来は真っ暗か安泰かのどちらかである。
  • 自説を主張するより、反対の人たちを攻撃する内容が多い。
  • どちらの立場の人たちも、反対の人たちは、なんかの業界と深くかかわっていると主張する。
  • データの出自が不明確な図表が多い。その一方、反対の人たちの本のデータの捏造やあいまいさを指摘している。
CO2削減賛成派が一冊売れれば、すぐに反対派の反論本が出る、というような繰り返しだ。ほんとに、毎月びっくりするほどの新刊が出ている。とてもついてゆけない。

賛成派も反対派も、結局売れるから本出してるんだよね。そして、売れ線のトピックに群がる職業文筆家たちが群がっている。そんな状況だと思う。

売れるためには、主張は明確で、断定的で、扇情的で、攻撃的であったほうがいい。だから、ひょっとしたら著者はもっと穏当に書きたいのに、出版社が過激にさせているのかもしれない。

しかし、出版業界としてはうれしいかもしれないが、真面目に勉強しようとしている人にとっては、今の状況は迷惑だ。僕たちがほしいのは、意見よりも事実だ。それも、センセーショナルでない事実だ。不都合なものも、不都合でないものも含められた。

そういう意味で、地球温暖化―埋まってきたジグソーパズルは良書といえる。温暖化問題の非専門家で勉強中の人は、まずこの本を読むとよい。出典を自分で確かめたうえで引用を示す、わからないことは断定しない、といった科学者としての基本的な態度が守られていて、かつ読みやすくおもしろい。

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