2012年10月31日

はじめて学会に参加する人のための7つのTips


さいきん、同僚や友達のあいだで、若手大学院生の学会発表の態度がよろしくない、という会話をよくするようになった。
たしかに、学会時における若者の行状にはいろいろ不満があるのだが、みんなが愚痴っている内容をよく考えると、不満の根源はシンプルだ。
それは、若者はただ発表という"手続き"をこなすこと以外に興味がなく、人と交わろうとしない、というものだ。

じっさい、学会発表をキャリアアップのための"業績"づくりの場としか考えていないような若者が増えている感じはする。
自分の発表の日だけ参加して、懇親会にもでないとか。発表に対して質問やコメントがあっても、単にその場を乗り切ればいいやというような返答しかしなかったりとか。

けれど、中には学会でもっといろんな人と交わりたい、ほかの研究者と交流したい、という希望をもっていながら、気後れしてうまくできない、という人もいるだろう。
むしろそう言う人が多数派だと思う。

そこで、学会でより研究交流を進めるための若者向けのTipsをいくつか記しておこうと思う。
ちなみに以下に記すことの半分くらいは、僕がM1のときに助手だったIさんから明示的に教わったことだ。こういうことをちゃんと教えてくれる人がいたことに、本当に感謝している。

1.名刺を作っておこう

学生はふだん名刺など使わないものだが、学会には自作でよいので名刺をもってゆき、新しく知り合いになった人に渡そう。
新米のあなたに名刺をもらっても、相手からあなたに用事があることはない。けれど、世の中には名刺交換という風習があって、名刺を渡された人は自分の名刺を相手に渡すことになっているのだ。あなたは自分が名刺をくばることで、交流を深めたい人の名刺をゲットできるというわけだ。その名刺をどう使うかは7に記す。

2.できるだけ早いうちに、自分の発表の座長を探して挨拶をしよう

発表者は事前に座長に挨拶するのが礼儀である。とはいうものの、あなたの先輩や指導教員はそんなことはしていないかもしれない。だがそれは先輩や指導教員が礼儀知らずなのではなく、座長と知り合いで、さほど礼儀に気を使わなくていいからだ。あなたは新米なのだから、しっかり座長に挨拶をしなくてはならない。

しかし、プログラムに座長の名前はあるが、あなたはその人の顔を知らない。そういうときは、先輩や指導教員に「私の発表の座長の誰々さんにご挨拶をしたいので紹介してください」とお願いしよう。

なんと言って挨拶するか。「先生のセッションで発表する某です。よろしくお願いします。」で十分だ。親切な人だったら「どんな発表するの?」とか「質問してほしいことある?」と聞いてくれるかもしれない。じつは、口頭発表には、自分のセッションの発表に対してフロアから質問もコメントもなかったら座長自ら質問する、という不文律がある。だから座長はいざというときの質問を準備しておかなくてはならないのだ。発表者が座長のよく知っている人なら、あいつはだいたいこういうことを話すだろうからこれを聞けばいいや、と思える。しかしあなたは新参者だ。あなたがどんな人で何を話すのか、抄録だけではよくわからない。だから座長も事前にあなたと話せるとうれしいのだ。

3.発表時間は超過するより余る方がだんぜんよろしい

発表時間が余って、質問もないと、沈黙の時が流れ、たいそう緊張する。けれど、時間超過するよりずっとよい。なぜなら、発表時間を超過すると質問時間をとってもらえないからだ。

自分の発表に対する質問やコメントは、自分に対する試練と捉えてはならない。新米のあなたにとって、質問とは「フロアにいる誰が自分の研究テーマに関心があるのか」を知る絶好のチャンスなのだ。いわば発表は「釣り」だ。極端な話、質問に答えられなくても、コメントの意味が理解不能でも構わない。自分がそのテーマを探求し続けるかぎり、質問者とは深く関わってゆくことになろう。関わりの最初の一歩が質問なのだ。時間超過して質問タイムがはしょられてしまったら、あなたはその機会を失うことになる。

4.自分の発表に質問やコメントをしてくれた人を覚えて、セッションのあとや懇親会のときにお礼を言おう

新米のあなたは学会に知り合いがいない。自分は相手を知っていても、相手は自分を知らない。だから話しかけづらい。だが、座長をしてくれた人や、質問してくれた人は、間違いなくあなたのことを知っている。話しかけない手はない。しかも、あなたには「お礼を言う」という大義名分がある。臆することはない。

お礼を言われて気分の悪い人はいない。それに、質問者に話しかけるというのは意欲のあらわれだし、自分の質問を真剣に考えてくれているのだなと感じてうれしいものだ。また、学会発表の質問時間というのは短く、言いたいことの全部を言えていないことがままある。質問者はもっとあなたをいじめてやりたかった(?)と思ってるかもしれない。そこへネギを背負った鴨のごとくあなたが現れるわけだ。懇親会なら酒も入っているし、セッションのときより饒舌に相手をしてくれることだろう。

5.偉い人と知り合いになりたかったら、懇親会で自分の指導教官に紹介してもらおう

あなたは学会で発表するくらいだから、そのギョーカイの優れた研究者を何人か知っていて、この機会にお近づきになりたいと思っているはずだ。でも、いきなり自分で話しかけ、自己紹介しても、軽くあしらわれるだけかもしれない。その人はあなたの発表なんか聞いていないかもしれない。怖そうな顔をしてるかもしれない。誰かとのお喋りに興じていて話しかけづらいかもしれない。

そんな時は、遠慮せず、先輩や指導教官に「誰々先生を紹介してください。」とお願いしよう。それを断るような奴は先輩でも指導教官でもない。もっとも、先輩や指導教官もその人とさほど関わりがないこともあるが。

先輩や指導教官を通じて紹介してもらうと、普通はわざわざ紹介された人をむげに扱うこともできないものだ。そこで相手から「どんなことをやってるんですか?」なんて聞かれたりする。うれしいことだ。発表が翌日であれば、明日発表するんです、と言うのも忘れずに。もしかしたら聞きにきてくれるかも。名刺も忘れず渡そう。

6.偉い人に話しかけづらかったら、その人の学生に話しかけて仲良くなろう

自分が話したい人と、どうしてもつながりがないときの一つの方法がこれだ。その先生の研究室の人に話しかけよう。学年や年齢が近ければ話しかけるハードルは低い。
話しかけ方だが、これもシンプルに「誰々先生の研究室の方ですよね?」と言えばいい。そして、「私は今こういう研究をしているのですけど、あなたはどんな研究をされてるんですか?」と続ける。

そうやってその人と話していると、本当のお目当ての先生がふとやってくるかもしれない。そうすれば、ちゃっかり先生を囲む一団に入ることができる。

ここで注意しなくてはならないのは、ちゃんと自分が話しかけた人と対話する、ということだ。「誰々先生は今どんなことをされてるのですか?」「誰々先生はふだんどんな方なんですか?」と質問ばかりしていては、相手は楽しくない。うざいと思うだろう。直接話せよって、感じだ。誰だって、自分に興味のある人と話すほうが面白い。

そして、そのようにして作った知り合いは、これからあなたにとって大切な財産になる。有名どころの偉い人は、どうせ自分とそんなに親しくしてくれないし、早く退官しちゃう。年齢の近い友人を増やすほうが、長い目で見たらベネフィットが大きい。

7.連絡先を教えてくれた人には、数日後に挨拶メールを送ろう

これもある種の礼儀だ。たいしたことを書く必要はない。「何々学会のときに(お話させていただいた/座長をしていただいた/質問していただいた)某です。その節はありがとうございました。今後もよろしくお願いします。」で十分である。ちなみに連絡先はもらった名刺に書いてある。いちいち尋ねなくてもよいのだ。

もっとも、あなたがそんなメールを送ったところで、返事がくることは多くない。では何のためにそんなことをするかというと、覚えてもらうためだ。後日メールを受け取った人は、えーと誰だったかなと一度は思い出そうとするのだ。だって、大事な人だったら返事をださなくてはならないから。しかし、思い出してみたら新米院生のあなただったとわかり、じゃあいいか、と放置される。

それでも、一度思い出してもらったことは、次回に役立つのだ。次回、別の学会などでその人に会った時、思い出してもらえるか。このお礼メールが左右すると言っても過言ではない。

以上、思いつくままに並べてみた。放任主義の研究室にいる若手院生の参考になれば幸いだ。 

はじめて学会に参加する人のための7つのTips


さいきん、同僚や友達のあいだで、若手大学院生の学会発表の態度がよろしくない、という会話をよくするようになった。
たしかに、学会時における若者の行状にはいろいろ不満があるのだが、みんなが愚痴っている内容をよく考えると、不満の根源はシンプルだ。
それは、若者はただ発表という"手続き"をこなすこと以外に興味がなく、人と交わろうとしない、というものだ。

じっさい、学会発表をキャリアアップのための"業績"づくりの場としか考えていないような若者が増えている感じはする。
自分の発表の日だけ参加して、懇親会にもでないとか。発表に対して質問やコメントがあっても、単にその場を乗り切ればいいやというような返答しかしなかったりとか。

けれど、中には学会でもっといろんな人と交わりたい、ほかの研究者と交流したい、という希望をもっていながら、気後れしてうまくできない、という人もいるだろう。
むしろそう言う人が多数派だと思う。

そこで、学会でより研究交流を進めるための若者向けのTipsをいくつか記しておこうと思う。
ちなみに以下に記すことの半分くらいは、僕がM1のときに助手だったIさんから明示的に教わったことだ。こういうことをちゃんと教えてくれる人がいたことに、本当に感謝している。

1.名刺を作っておこう

学生はふだん名刺など使わないものだが、学会には自作でよいので名刺をもってゆき、新しく知り合いになった人に渡そう。
新米のあなたに名刺をもらっても、相手からあなたに用事があることはない。けれど、世の中には名刺交換という風習があって、名刺を渡された人は自分の名刺を相手に渡すことになっているのだ。あなたは自分が名刺をくばることで、交流を深めたい人の名刺をゲットできるというわけだ。その名刺をどう使うかは7に記す。

2.できるだけ早いうちに、自分の発表の座長を探して挨拶をしよう

発表者は事前に座長に挨拶するのが礼儀である。とはいうものの、あなたの先輩や指導教員はそんなことはしていないかもしれない。だがそれは先輩や指導教員が礼儀知らずなのではなく、座長と知り合いで、さほど礼儀に気を使わなくていいからだ。あなたは新米なのだから、しっかり座長に挨拶をしなくてはならない。

しかし、プログラムに座長の名前はあるが、あなたはその人の顔を知らない。そういうときは、先輩や指導教員に「私の発表の座長の誰々さんにご挨拶をしたいので紹介してください」とお願いしよう。

なんと言って挨拶するか。「先生のセッションで発表する某です。よろしくお願いします。」で十分だ。親切な人だったら「どんな発表するの?」とか「質問してほしいことある?」と聞いてくれるかもしれない。じつは、口頭発表には、自分のセッションの発表に対してフロアから質問もコメントもなかったら座長自ら質問する、という不文律がある。だから座長はいざというときの質問を準備しておかなくてはならないのだ。発表者が座長のよく知っている人なら、あいつはだいたいこういうことを話すだろうからこれを聞けばいいや、と思える。しかしあなたは新参者だ。あなたがどんな人で何を話すのか、抄録だけではよくわからない。だから座長も事前にあなたと話せるとうれしいのだ。

3.発表時間は超過するより余る方がだんぜんよろしい

発表時間が余って、質問もないと、沈黙の時が流れ、たいそう緊張する。けれど、時間超過するよりずっとよい。なぜなら、発表時間を超過すると質問時間をとってもらえないからだ。

自分の発表に対する質問やコメントは、自分に対する試練と捉えてはならない。新米のあなたにとって、質問とは「フロアにいる誰が自分の研究テーマに関心があるのか」を知る絶好のチャンスなのだ。いわば発表は「釣り」だ。極端な話、質問に答えられなくても、コメントの意味が理解不能でも構わない。自分がそのテーマを探求し続けるかぎり、質問者とは深く関わってゆくことになろう。関わりの最初の一歩が質問なのだ。時間超過して質問タイムがはしょられてしまったら、あなたはその機会を失うことになる。

4.自分の発表に質問やコメントをしてくれた人を覚えて、セッションのあとや懇親会のときにお礼を言おう

新米のあなたは学会に知り合いがいない。自分は相手を知っていても、相手は自分を知らない。だから話しかけづらい。だが、座長をしてくれた人や、質問してくれた人は、間違いなくあなたのことを知っている。話しかけない手はない。しかも、あなたには「お礼を言う」という大義名分がある。臆することはない。

お礼を言われて気分の悪い人はいない。それに、質問者に話しかけるというのは意欲のあらわれだし、自分の質問を真剣に考えてくれているのだなと感じてうれしいものだ。また、学会発表の質問時間というのは短く、言いたいことの全部を言えていないことがままある。質問者はもっとあなたをいじめてやりたかった(?)と思ってるかもしれない。そこへネギを背負った鴨のごとくあなたが現れるわけだ。懇親会なら酒も入っているし、セッションのときより饒舌に相手をしてくれることだろう。

5.偉い人と知り合いになりたかったら、懇親会で自分の指導教官に紹介してもらおう

あなたは学会で発表するくらいだから、そのギョーカイの優れた研究者を何人か知っていて、この機会にお近づきになりたいと思っているはずだ。でも、いきなり自分で話しかけ、自己紹介しても、軽くあしらわれるだけかもしれない。その人はあなたの発表なんか聞いていないかもしれない。怖そうな顔をしてるかもしれない。誰かとのお喋りに興じていて話しかけづらいかもしれない。

そんな時は、遠慮せず、先輩や指導教官に「誰々先生を紹介してください。」とお願いしよう。それを断るような奴は先輩でも指導教官でもない。もっとも、先輩や指導教官もその人とさほど関わりがないこともあるが。

先輩や指導教官を通じて紹介してもらうと、普通はわざわざ紹介された人をむげに扱うこともできないものだ。そこで相手から「どんなことをやってるんですか?」なんて聞かれたりする。うれしいことだ。発表が翌日であれば、明日発表するんです、と言うのも忘れずに。もしかしたら聞きにきてくれるかも。名刺も忘れず渡そう。

6.偉い人に話しかけづらかったら、その人の学生に話しかけて仲良くなろう

自分が話したい人と、どうしてもつながりがないときの一つの方法がこれだ。その先生の研究室の人に話しかけよう。学年や年齢が近ければ話しかけるハードルは低い。
話しかけ方だが、これもシンプルに「誰々先生の研究室の方ですよね?」と言えばいい。そして、「私は今こういう研究をしているのですけど、あなたはどんな研究をされてるんですか?」と続ける。

そうやってその人と話していると、本当のお目当ての先生がふとやってくるかもしれない。そうすれば、ちゃっかり先生を囲む一団に入ることができる。

ここで注意しなくてはならないのは、ちゃんと自分が話しかけた人と対話する、ということだ。「誰々先生は今どんなことをされてるのですか?」「誰々先生はふだんどんな方なんですか?」と質問ばかりしていては、相手は楽しくない。うざいと思うだろう。直接話せよって、感じだ。誰だって、自分に興味のある人と話すほうが面白い。

そして、そのようにして作った知り合いは、これからあなたにとって大切な財産になる。有名どころの偉い人は、どうせ自分とそんなに親しくしてくれないし、早く退官しちゃう。年齢の近い友人を増やすほうが、長い目で見たらベネフィットが大きい。

7.連絡先を教えてくれた人には、数日後に挨拶メールを送ろう

これもある種の礼儀だ。たいしたことを書く必要はない。「何々学会のときに(お話させていただいた/座長をしていただいた/質問していただいた)某です。その節はありがとうございました。今後もよろしくお願いします。」で十分である。ちなみに連絡先はもらった名刺に書いてある。いちいち尋ねなくてもよいのだ。

もっとも、あなたがそんなメールを送ったところで、返事がくることは多くない。では何のためにそんなことをするかというと、覚えてもらうためだ。後日メールを受け取った人は、えーと誰だったかなと一度は思い出そうとするのだ。だって、大事な人だったら返事をださなくてはならないから。しかし、思い出してみたら新米院生のあなただったとわかり、じゃあいいか、と放置される。

それでも、一度思い出してもらったことは、次回に役立つのだ。次回、別の学会などでその人に会った時、思い出してもらえるか。このお礼メールが左右すると言っても過言ではない。

以上、思いつくままに並べてみた。放任主義の研究室にいる若手院生の参考になれば幸いだ。