2008年6月 3日

イラクは食べる--革命と日常の風景(岩波新書:酒井啓子 著)

イラクは食べる--革命と日常の風景(岩波新書:酒井啓子 著)

本書は大学の図書館でみつけて借りて、通勤途中に読んだが、とてもおもしろかった。
中東問題の専門家である著者は、テレビでもよく見かけるが、本書の内容も、テレビでのコメント同様わかりやすく、とても勉強になった。宗派対立とか、反米感情とか、今や時折思い出したように切れ切れに報道される内容からは捉えがたいイラクの実情について、ああ、そういうことだったのか、と何度もうなづかされた。

しかし、本書のもうひとつの魅力は、各章ごとに紹介されるイラクの料理だ。ディナーあり、朝食あり、ファストフードやお菓子もあり。それらの料理は、実はそれほど内容と関連があるというわけではないのだが、なぜか胸を打つ。

なにより、おいしそうである。ちょっと工夫すれば日本でも作ってみることができそうだ。また、アフリカで時々似たような料理にお目にかかることがあり、懐しさも覚える。

そして、レシピや写真を見て食欲が刺激されると同時に、食を通じたイラク人の日常が見えてくる。見えてくる、というより、感じられてくる。これまで現実感のなかった「イラク」という場所で、人々がわれわれと同じように日々料理を作り、それを味わっているということが実感されるのだ。イラク人の息遣いが伝わってくるような一冊である。

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