2012年6月13日

害虫の輸入自由化!

外来生物とは、人間によって本来の生息地でないところから持ち込まれた生物のことだ。現在の日本にも、さまざまな外来生物が存在する。

外来生物は意図的に持ち込まれることもあるし、期せずしてもちこまれることもある。いずれにせよ、外来種の多くは、在来の生物の生存や繁殖に悪影響を及ぼすことが多い。

外来生物がいったんその地に定着してしまうと、駆除するのは大変困難だ。在来種もろとも根絶やしにしてしまうならば簡単(かもしれないの)だが、外来種だけを、となると、実に地道な作業が必要になる。

したがって、外来生物から在来種とそれらの生きる生態系を守るには、侵入させないよう、水際でブロックすることが決定的に重要だ。そのために、日本でもさまざまな法律が整備され、日本の生態系や農地を守るため、多くの外来種の国外からの持ち込みを禁じている。

ところが、最近、「自由貿易」の名の下に、その持ち込み規制が瓦解しつつあるという論文を読んでびっくりした。当該論文の書誌情報は以下の通り。


五箇公一 2012, 外来種は食い止められるのか?〜COP10を終えて. 保全生態学研究17: 123-130


日本は自由貿易を促進するWTO(世界貿易機関)に加盟し、"自由で公正な貿易"のためのさまざまな取り決めをおこなっている。

WTOが自由貿易を促進するといっても、あらゆるものの輸入を自由化しなくてはならないわけではない。各国は、自国の利益のために、関税をかけたり、輸入を禁止したりすることができる。しかし、そうした自由貿易に反する行為をするためにはWTOの加盟国から同意を得なくてはならないのである。

そして、現在、日本はそのアメリカ合衆国をはじめとするWTO加盟国からの圧力によって、害虫の輸入を次々と自由化しているのだという。上記論文にこんな事例が紹介されている。2004年、アメリカから輸入したリンゴに、日本の植物防疫法で規制されているナミハダニの1種が確認された。それで日本が輸入を拒否したところ、アメリカはWTOの協定違反だとして訴訟をおこした。そしてなんと日本は負けてしまい、ナミハダニの"輸入"を解禁させられてしまった。そしてそれを機につぎつぎと病害虫の輸入が自由化され、2005年には42種もの病害虫が検疫対象種からはずされてしまったのだそうだ。

経済至上主義ここに極まれりである。